真夜中12時過ぎ。無性に車を走らせたくなって愛車のマセラティ(ウソ)のガレージへ。新しい企画サイトを勃ちあげるに際しアイデアというアイデアのすべてが枯渇し、もう一秒もPCの前に座ってられない衝動。オフィスのドアを開けるとやけに静かな夜だった。
オフィスからガレージへ向かう道で、こんな夜中でもドライブに付き合ってくれそうな女の子の名前を探す。おいおい、よせよ、平日の真夜中だぜ。
ドライバーズシートに身体を埋め、目を瞑ってアイドリングの音に耳を澄ます。そうか、オマエもブチかましたいのか、と一人で呟く。携帯電話を閉じて助手席へ放り出し、ナビの電源を落として、シフトノブをグイと掴んだ。ミッドナイト・ドライビング。アクセスペダルを踏みこんでハイビームが闇を切り裂いた。ハードボイルドだせ。
ルート1を右か左かで三秒だけ悩む。そしてもちろん男は左へ。濡れた路面に後輪が激しく空転してそのまま電柱に突き刺さりそうになる。
バックミラーには一台の車のライトも写らない。静寂を切り裂くエキゾーストとタイヤのスリップ音。そこには煮詰まって先に進まない企画書も、また、ユルいシャクりの風俗嬢の虚脱感もない。うっかり気を抜けば、真っ白なガードレールとキスしそうになる、そんな緊張感に酔う。
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どれくらい走っただろう。センターコンソールの時計を見るともう午前二時を過ぎていた。そして、すっかり道に迷うオレ。子犬のように急に心細くなる。ナビの電源を入れてもDVDのマップのエリア外。そして携帯は圏外。ハードボイルドどころじゃない。帰り道不明。おまけに20M先も見えない激しい濃霧。ビビる。っていうか、コエー。
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コンビニを見つけた時には、砂漠の中でオアシス見つけた旅人のような気分だった。小坊主みたいなヌケた顔した店員だったが、道案内は的確だった。ようやくオフィスに戻ったのは午前四時を過ぎていた。2目盛り分のガソリンを浪費し世界の二酸化炭素濃度を増やし男が得たモノは何もない。
最後オフィスへの帰り、マセラティを路肩に停めてダイドーの自販機の前で愛飲のブラックコーヒーを買う。そしてこんな夜中に叩き起こしても滅多に怒らない素人新人の女の子に電話をする。七回目のコールで受話器を上げる彼女。押し黙ったままの相手に、いかにさっきまでのオレが心細かったか、を説明する。相手は無言。多分怒っている。でもいい、もしかしたら、あのままオレはどこか人智の及ばない別の世界へ連れ込まれてしまう可能性だってゼロではなかったのだ。それくらいオレは孤独でビビっていたのだ。無言。なぁ一言で良い。ただ一言声をかけてくれ。無言。
この女とはこれっきりにしよう、と思った瞬間だった。ハードボイルド。多分、相手も同じ事を思っているだけろうけど。